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大きく日本経済の成長という観点から見た場合にも、健全な経済競争によって経済が維持されているなどとは到底いえないものであり、経済競争自体をゆがめる。 消費者の生活を害しない販売活動の推進は、経済の健全な競争を維持・促進することと同じなのである。
こうした点はさておくとしても、被害にあった場合に苦しむのは消費者自身である。 自分がバカだったと自己嫌悪に陥るだろうし、生活を圧迫し、経済的に破綻してしまうこともある。
最近でも、私が扱った事件で、悪質商法業者に次々とだまされた結果、老後の蓄えをなくした上に、多額のクレジット債務を負担させられ、自己破産をせざるをえなくなった高齢者がいる。 「人生、一生懸命生きてきて、最後の決算がこれだったのではねえ」といわれると胸が詰まる。
悪質商法対策のためには、様々な複合的な取り組みが必要だ。 最後に、悪質商法被害を防止するために必要なこととして、消費者にできること、事業者が取り組むべきこと、行政が取り組むべきことを、それぞれ整理してみよう。
悪質商法被害のなかには、消費者のちょっとした知恵や努力で防止できたかもしれないものも少なくない。 ここでは、こうした視点から、消費者被害にあわないためのコツを整理してみ普通、悪質商法被害にあわないためにというと、「こういう悪質商法に注意しよう」「こういう手口に気をつけよう」「こうして近づいてくる業者は悪質業者」「うまい話はない」といった受身のハウツーが多いように思われる。

それで知っていれば役に立つ。 正しいことは間違いない。
「うまい話はない」ということは、誰でも持っている常識ではないだろうか。 それでも、いまだに多くの消費者は、言葉巧みに近づいてくる悪質商法業者によって被害にあい、聞いた私たちは「うまい話はないなんて当たり前なのに、いったいなぜ?」と、岡目8目的な疑問を持つ。
様々な消費者被害の相談を受け、訴訟をした経験から、被害にあう大きな理由の一つとして、「被害にあわないようにしよう」「どんな業者があぶないか」という受身の姿勢ゆえの限界があげられるように思う。 消費者と事業者とでは情報格差があるので、たとえば食品の虚偽表示や欠陥商品のリコール隠しのようなことをされると、消費者がどんなに努力しても被害を防止することは不可能である。
こういう被害では消費者の落ち度はまったくない。 事業者が今後同様のことを繰り返さないような根本的な改善策を講ずべき問題である(今、規制緩和と自己責任の流れのなかで事業者に強く求められている「コンプライアンス」という考え方である)。
そういう消費者が避けられないようなものは別としても、「その契約は、本当に自分にとって必要なものかをよく考えて、賢く選ぶ」「選ぶのは自分だ」という姿勢を持つことによって避けることができる被害も少なくない。 「悪質商法被害にあわないコツ」というのは、「賢い契約の結び方」ということだと思われる。
契約とはどういうものかは前章で解説したが、ここでは契約の基礎を踏まえながら、「賢い契約の選び方、結び方」を整理してみよう。 ある意味では常識的なことばかりでもある。
一方では、現実の勧誘方法や、業者が用意している説明資料や契約書が「お客さん」である消費者の立場をどこまで配慮して作成されているかを考えると、実行するのは難しい部分もあるかもしれない。 それでも、基本的に次のような態度で対応し、納得できない場合には意見を述べて改善を求めるといったことの積み重ねが重要ではないかと思うのである。
初歩的なことだが、賢い契約をする基本中の基本である。 日本人には、はっきりと断ることが苦手な人が少なくない。

「必要がないことは私の態度でわかるはず。 それなのにしつこく居座られて、ホント迷惑しました」などという人に、弓必要ない。
忙しいからもう帰ってほしい』とはっきり断ったのですか」と質問すると、「相手に感じが悪いでしょう」「相手が開き直ったら怖いじゃありませんか」という。 別に横柄な態度をとれとか、失礼な態度をとれ、といっているのではない。
自分の考えを相手にはっきりと伝えるようにすべきであるといっているにすぎない。 契約の世界というのは、日常のお付き合い感覚とは違うことに気づいてほしいのである。
日本人同士のお付き合いというのは、本当のことであっても露骨に直接はいわないのが上品で感じがよいとされる傾向がある。 「それとなく察してもらう」「あ・うんの呼吸」の関係が大切だといわれるのはそういうことだろう。
親しい人間関係、身内などでは、そうかもしれない。 契約関係では、「あ・うんの呼吸」などというのはないし、「察してもらう」などといっていれば、つけ込まれるだけである。
契約の場面では、クールにドライに自分の考えをはっきり伝えるべきである。 セールスマンが訪問して電話をかけてきた場合に、興味がない、必要がないといって断ると、「説明だけでも聞いてもらいたい」といわれることがある。
「説明を聞いてもらうだけでも勉強になる」などとうまいことをいったりする。 こちらに契約するつもりがない以上、お互いに時間の無駄である。
断るべきである。 多くの場合、説明だけでも聞いてくれるところまで持ってこられたと思うと、セールスマンは「契約まであと一押し」と期待するし、頑張る。
「セールスは断られたところから始まる」というのが、セールスの極意だと思っているからである。 したがって、「説明だけでも」といわれ、親切のつもりで時間を割こうものなら、契約を断る消費者に向かって「人の時間を使った責任をとれ、契約しろ」「時間泥棒」などといわれて威圧される馬鹿げた事態に陥る危険もある。
勧誘するのは事業者の営業の自由だろうが、契約するかどうかは消費者の自由である。 契約エ悪質商法被害で結構多いのが、「迷ったらとりあえず契約し、そのあとで考える」というものである。

私のところにも、一応契約したのですが、あとでいろいろ調べてみたら、やっぱりやめたほうがいいような気がしてきて」「迷っていたら、セールスマンが『とりあえず契約してから考えればいいでしょう』というので契約したのに、『やめたいといっても、契約した以上、やめるわけないかないでしょう』なんていわれて」と困惑して相談にくるケース迷った場合は、断るという選択をするときに理由はいらない。 まして、事業者が納得できるような理由を説明する必要もない。
きっぱりと「必要はないので契約しません」というだけで十分である。 消費者は、時点ですでに事業者に主導権を握られ、相手のペースに引き込まれてしまっているわけである。
ケースでは、消費者はただでさえ弱い立場なのに、さらに弱い立場になってしまう。 契約に関する法律ルールでは、クーリング・オフ制度があるなどの特別な場合を除けば、いったん契約した以上、消費者の都合で一方的にやめることはできない。
契約後に中途で解除できる場合もあるが、その場合には、一方的に解除して何の負担もしなくてすむというわけにはいかず、事業者に負担や損失を与えた部分は清算をしなければならないのが原則である。 勧誘の段階でだまされたり脅かされたりしたといった特殊な事情がある場合に、契約を取り消すことができることは、前章で説明したとおりである。

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